「それ、前任の営業が言ったことです」と言われたときの心の声
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「それ、前任の営業が言ったことです」と言われたときの心の声
過去営業の“ツケ”をどう回収するか
商談の途中、ふいにこう言われることがあります。
「それ、前任の営業の方も同じことを言っていましたよ。」
一瞬、空気が変わる。胸の奥がざわつく。
私はその人ではない。事情も背景も知らない。でも、なぜか“同罪”扱いだ。
営業という仕事の厳しさは、ここにあります。信用は個人で築くものなのに、不信は会社単位で引き継がれる。この瞬間、現場営業は二つの選択を迫られます。言い訳するか。引き受けるか。
なぜ“前任のツケ”は重いのか
顧客側の心理を整理すると、構造が見えてきます。
以前、約束されたことが実行されなかった
期待値を上げられたが、成果が出なかった
担当が変わり、説明が食い違っている
つまり、問題は「言った内容」ではありません。問題は“約束の履行”です。
顧客は、内容そのものよりも、「また同じことが起きるのではないか」という不安を抱えています。
営業が直面しているのは、過去の言葉ではなく、未回収の信頼なのです。
やってはいけない3つの反応
この場面で焦ると、つい次のような反応をしてしまいます。
① 前任を否定する
「それは前任の説明が不十分だったのかもしれません。」
一見フォローのようで、組織としての信頼を下げます。顧客は内部事情を聞きたいのではありません。
② 自分は違うと強調する
「私は違います。私なら大丈夫です。」
根拠のない自己主張は、逆効果です。信用は宣言ではなく、構造で示すものです。
③ 話題を変える
不都合な話題を流すと、「また曖昧にされた」という印象が残ります。
まずやるべきことは“引き受ける”こと
最初の一言は、これが最も効果的です。
「その点についてご不安を感じさせてしまっているのですね。」
反論しない。否定しない。まず受け止める。次にこう続けます。
「当時の状況を詳しく教えていただけますか?」ここで初めて、構造が見えてきます。
何が約束され、何が実行されず、どこで齟齬が生まれたのか。
過去を知らずして、未来は設計できません。
ツケの正体を分解する
前任のツケは、大きく三種類に分けられます。
① 過剰約束型
成果やスピードを誇張したケース。期待値が現実を上回った。
② フォロー不足型
導入後の伴走が弱かった。結果は悪くなくても、体感価値が低かった。
③ 情報断絶型
担当変更時の引き継ぎ不足。顧客が“放置された”と感じている。
タイプを見誤ると、対策がずれます。
信頼を再構築する3つの設計
① 約束の再定義
まず、今回の提案で何を約束するのかを明文化します。
・できること・できないこと・条件付きで可能なこと
曖昧な希望ではなく、具体的な前提条件を共有する。
信頼は、期待値の調整から始まります。
② 小さな成果を先に設計する
過去に裏切られた顧客は、大きな約束を信じません。
だからこそ、
・短期間で検証できる施策・部分導入・テスト運用
“小さく始めて確認する”構造を提示します。
言葉ではなく、体験で信用を取り戻す。
③ 定期的な可視化
成果や進捗を定期的に数値で共有する仕組みを設計する。
・月次レポート・定例ミーティング・KPIの共有
「言った」「言わない」を防ぐには、“見える化”しかありません。
経営視点での再考
もし前任のツケが頻発しているなら、個人の問題ではなく、営業設計の問題です。
・成果定義が曖昧ではないか・契約時のスコープが明文化されているか・担当変更プロセスが整備されているか
営業は個人競技ではありません。組織戦です。
ツケを減らすには、再現性のある仕組みが必要です。
心の声との向き合い方
正直に言えば、理不尽に感じる瞬間もあるでしょう。
自分は何もしていない。それなのに疑われる。
しかし、ここで逃げずに引き受けた営業は強くなります。
なぜなら、ゼロからの信頼構築より、マイナスからの回復の方が、顧客の記憶に残るからです。
「最初は不安だったが、今回は違った。」この一言は、最高の評価です。
最後に
「それ、前任の営業が言ったことです。」
この言葉は、拒絶ではありません。過去の未回収の感情の表出です。
ツケは、責めるものではなく、回収するもの。
・受け止める・分解する・再設計する・小さく証明する
この順序を守れば、信頼は戻ります。
営業は、商品を売る仕事ではありません。信用を積み上げる仕事です。
そして信用は、困難な場面でこそ築かれます。
過去のツケを回収できる営業は、顧客にとって“会社の顔”になります。
マイナスからのスタートは、実は最大のチャンスかもしれません。
そこを乗り越えた先にある関係性は、驚くほど強固です。





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