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「決裁が遅い時代」に売るための営業戦略

  • 2 日前
  • 読了時間: 5分
「決裁が遅い時代」に売るための営業戦略

「決裁が遅い時代」に売るための営業戦略

― 稟議・社内調整を制する“担当者支援型営業”の実践 ―

「いい提案なのに決まらない」「手応えはあるのに、いつまで経っても稟議が降りない」

このような状況は、いまや珍しくありません。むしろ標準です。営業の現場では、明らかに“決裁が遅くなっている”という実感があるはずです。


ここで重要なのは、この現象を単なる「景気」や「企業体質」の問題として片付けないことです。実態としては、意思決定の構造そのものが変化しているのです。

そして結論から言えば、現代の営業は「顧客企業の中で、決裁を通す力」まで設計できて初めて成果が出る時代になっています。


営業の役割は、もはや提案して終わりではありません。“社内で通る形に仕上げる”ところまで含めて、営業価値です。


1. なぜ決裁はここまで遅くなったのか

まず、現象の背景を正確に理解することが重要です。対処法は原因に依存します。

■ ① 意思決定の「分散化」と「多層化」

かつては、部長や役員の一声で決まるケースも多くありました。しかし現在は、

  • 現場部門

  • 管理部門(法務・経理)

  • 情報システム部門

  • 経営層


といった複数の視点が関与し、それぞれが“異なる評価基準”を持っています。

結果として、一つの提案に対して複数の「合意形成」が必要になる構造になっています。


■ ② 「失敗できない空気」の強まり

市場環境の不確実性が高まる中で、企業は意思決定に対してより慎重になっています。

  • 投資対効果が不透明

  • 導入後の運用リスク

  • 社内評価への影響


これらが重なり、「決めないこと」が最も安全な選択になりがちです。

つまり、営業が向き合うべきは「競合」だけではありません。“何も決めない”という選択肢そのものです。


■ ③ 担当者の“リスク回避行動”

現場の担当者は、意思決定のキーパーソンである一方で、最大のリスクも背負っています。

  • 稟議が否決されたらどうしよう

  • 導入後に問題が起きたら責任を問われるのではないか

  • 上司に突っ込まれた時に答えられるか


この心理状態を無視して提案しても、前には進みません。

むしろ、担当者は「通せる提案」しか上げないのが自然です。


2. 決裁プロセスの長期化にどう対処するか

この環境において成果を出す営業は、アプローチを大きく変えています。

ポイントは、「決裁を待つ」のではなく、決裁プロセスそのものに介入することです。

■ ① “決裁構造”を可視化する

まず最初にやるべきは、顧客企業の意思決定構造を把握することです。

  • 最終決裁者は誰か

  • 実質的な影響力を持つ人物は誰か

  • どの部門がボトルネックになりやすいか


ここが曖昧なままでは、どれだけ良い提案をしても通りません。

重要なのは、「誰に売るか」ではなく、**「どのルートで通すか」**を設計することです。


■ ② 稟議を“通る形”に変換する

営業資料は「魅力的であること」よりも、「通ること」が重要です。

そのためには、以下の観点で再構成する必要があります。

  • 投資対効果(定量)

  • リスクとその対策

  • 他社事例・再現性

  • 社内への影響範囲


特に重要なのは、「突っ込まれそうなポイント」を先回りして潰しておくことです。

稟議は“減点方式”で見られます。一つの不安要素が、全体を止める要因になります。


■ ③ “小さく決める”設計を入れる

いきなり大きな決裁を通そうとすると、当然ハードルは上がります。

そこで有効なのが、

  • トライアル導入

  • 限定部署での検証

  • 段階的な拡張プラン


といった、「小さく始める設計」です。

これにより、担当者の心理的負担が大きく下がります。

決裁とは、ロジックだけでなく“安心設計”でもあります。


3. 担当者支援型営業の具体手法

ここからが実務の核心です。決裁を通すためには、担当者を“味方”にするだけでは不十分です。

担当者を「社内営業ができる状態」にすることが必要です。


■ ① 担当者の“社内プレゼン資料”を一緒に作る

多くの営業が見落としているのがここです。

担当者は、あなたの提案をそのまま社内で説明できるわけではありません。むしろ、自分の言葉で再構成しなければなりません。ここに大きなロスが生まれます。

だからこそ、

  • 上司向けの要約資料

  • 経営層向けの意思決定ポイント

  • 部門別のメリット整理


これらを“そのまま使える形”で提供する。

営業資料ではなく、「社内通過用資料」を作る。この発想の転換が、通過率を大きく変えます。


■ ② 想定Q&Aを事前に共有する

担当者が最も困るのは、「想定外の質問」です。

  • 「それ、本当に効果出るの?」

  • 「他社と何が違うの?」

  • 「失敗したらどうするの?」


これらに答えられなければ、その場で止まります。

だからこそ、営業側があらかじめ


  • 想定される質問

  • それに対する回答

  • 補足データ

をセットで提供する。

これは非常に地味ですが、決裁スピードに直結します。


■ ③ “担当者の立場”を守るコミュニケーション

最後に、最も重要でありながら見落とされがちなポイントです。

営業は、つい「自社にとっての正しさ」を優先しがちです。しかし現場では、「担当者にとって安全かどうか」が最優先です。


例えば:

  • 無理にクロージングを急がない

  • 社内状況に配慮した提案をする

  • 担当者の評価にプラスになる形を意識する


この姿勢が伝わると、担当者は一気に動きやすくなります。

結果として、あなたの提案が“通したい案件”に変わります。


まとめ:「売る力」より「通す力」が差を生む時代

営業というと、「どれだけ上手く売れるか」に目が向きがちです。しかし現在の本質はそこではありません。

どれだけ“通る形”に設計できるかです。


  • 決裁構造を理解する

  • 稟議を通る形に変換する

  • 担当者が動ける状態をつくる


これらを一貫して実行できる営業は、多少商品力で劣っていても、結果を出し続けます。

少し現実的すぎる話かもしれませんが、企業の意思決定は理想論では動きません。

だからこそ、構造で勝つ。設計で勝つ。

そして何より、担当者にとって「この人と進めれば通る」と思われる存在になること。それが、決裁が遅い時代における最大の競争優位です。

営業の仕事は、ますます高度になっています。しかし裏を返せば、ここまでできる営業はまだ少ない。

だからこそ、今この視点を持つこと自体が、大きな武器になります。


 
 
 

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