中小企業のための海外展開 実践ガイド売るだけじゃない、残すためのグローバル戦略物流・通関・決済といった見えにくい壁を乗り越える
- rmatsumoto9214
- 6月25日
- 読了時間: 3分

中小企業のための海外展開 実践ガイド売るだけじゃない、残すためのグローバル戦略物流・通関・決済といった見えにくい壁を乗り越える
海外にモノを「売る」だけで終わらせない。企業として「残る」ための視点が今、求められています。物流・通関・決済といった“見えにくい壁”を乗り越え、中小企業が実践的に取り組める海外展開戦略を、現場目線で解説します。
第1章|海外展開は「営業戦略」ではなく「事業構造」の再設計
海外展開=販路開拓と考えがちですが、本質は事業全体の再構築です。製品の仕様、価格体系、顧客対応、アフターサポート、回収リスクまでを含めたトータル設計が成功のカギです。
ポイント:
日本で売れている商品 ≠ 海外で売れる商品
「売る方法」だけでなく「届け方」と「回収(お金・返品)の仕組み」を設計する
自社のリソースで対応できる国・地域を見極める
第2章|物流・通関・決済の「見えにくい壁」を超えるには
● 見えない壁①:物流の非効率と遅延
日本から海外への出荷には時間差とコストの壁が立ちはだかります。
相手国の物流インフラや天候、ストライキ、港湾事情など、「想定外」が日常茶飯事。
対応策:
FOB条件であれば相手の物流網を活用
CIF条件であれば保険付きでコントロール強化
信頼できるフォワーダー(国際輸送業者)との契約が命綱
● 見えない壁②:通関の複雑さ
通関書類のミスで商品が止まる=売上が止まる。
各国の規制(食品成分、電波法、ラベリング)を理解し、事前準備が不可欠。
対応策:
HSコードの確認と専門家の活用
輸出入代行業者や通関士と事前にすり合わせ
原産地証明書(CO)の取得を忘れずに
● 見えない壁③:決済・為替リスク
輸出入で最も軽視されがちだが、外貨送金と為替変動が企業の利益を大きく揺らします。
対応策:
外貨建て決済には**T/T(電信送金)前払い or L/C(信用状)**を検討
為替予約や両替タイミングの分散でリスクを低減
銀行・為替専門サービス(WiseやPayoneerなど)を比較活用
第3章|貿易用語「FOB」「CIF」をシンプルに整理
用語 | 意味 | 誰がどこまで責任を負うか |
FOB(Free On Board) | 本船渡し | 輸出者は港で商品を船に乗せるまでが責任。以降は買い手が負担。 |
CIF(Cost, Insurance, Freight) | 運賃・保険料込み | 輸出者が目的港までの運賃と保険を負担。より高リスクに備えた形。 |
実務的視点:
初めての輸出ではCIFで主導権を握るのが安心
慣れてきたらFOBに切り替えて、相手先に物流責任を委ねていく
第4章|通関・保険・返品のリスクをどう管理するか?
通関書類のミスによる遅延
→ 商品ごとに現地で必要な許認可をリストアップし、輸出前にチェック体制を構築。
輸送中の破損・紛失
→ 輸送保険の加入は必須(インコタームズに沿った範囲で)。事故対応フローも社内で明文化。
返品のコスト・再販売不能リスク
→ 返品ポリシーを明記し、現地パートナーと**「返品時の再販売権」**についても契約に入れておく。
第5章|外貨決済・送金・為替対策の初歩
● 外貨で受け取る・支払う
海外取引の基本は外貨口座の開設
日本の銀行だけでなく、Wise、Payoneer、Revolutなどのデジタル送金サービスも要検討
● 為替の変動リスクを最小化する方法
契約時点での為替予約(Forward契約)を活用
決済タイミングの分散(一括送金よりも分割送金)
まとめ|「海外に売る」ではなく「海外に残る」ために
中小企業の海外展開において、物流・通関・決済という「裏方」の設計が成否を大きく分けます。今こそ、グローバル時代にふさわしい経営のOS(Operating System)を自社に実装するタイミングです。
「売る」ことに全力を尽くすのではなく、「残る」ための設計に知恵を注ぎましょう。応援しています。前進あるのみです。
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