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中小企業のための海外展開 実践ガイド売るだけじゃない、残すためのグローバル戦略ターゲット市場の選定方法と優先順位のつけ方

  • 執筆者の写真: rmatsumoto9214
    rmatsumoto9214
  • 6月5日
  • 読了時間: 3分

中小企業のための海外展開 実践ガイド売るだけじゃない、残すためのグローバル戦略  ターゲット市場の選定方法と優先順位のつけ方

中小企業のための海外展開 実践ガイド売るだけじゃない、残すためのグローバル戦略ターゲット市場の選定方法と優先順位のつけ方


海外展開は「売れる市場を探すこと」と思われがちですが、実は「残れる市場を築くこと」が本質です。短期的な売上ではなく、長期的に自社の価値を発揮できる「選ばれる存在」として定着できるかが、グローバル戦略の成功を分けます。


今回はその中でも「ターゲット市場の選定方法と優先順位のつけ方」について、実際の中小企業の事例も交えながら、5つの視点から解説いたします。


1. ターゲット市場の選定基準:5つの視点とは?

以下は、海外市場を選定する際に検討すべき主要な5つの視点です。


① 市場規模と成長性

  • 人口消費者層の厚みは重要です。ただし、単に人口が多い=売れる、ではありません。

  • 重要なのは「今後どれだけ成長する可能性があるか」。

例:インドは人口が多いですが、所得分布や流通事情を把握しないと、想定外の苦戦を強いられるケースもあります。


② 可処分所得と購買力

  • ターゲットとなる層の購買力を細かく見ること。国全体のGDPよりも階層別の購買余力が重要です。

  • 富裕層がいる=売れるではなく、「誰が・どこで・何にお金を使っているか」を具体的に分析。


③ 親日度・文化的親和性

  • 日本製品に対する信頼感や、現地での受け入れやすさも成功のカギです。

  • 親日度の高い国(台湾、タイ、ベトナムなど)では、マーケティングコストが抑えられることも。

ただし、親日=無条件で売れるわけではありません。「好き」と「買う」は別です。


④ 法制度・商慣習・物流インフラ

  • 輸入規制、関税、認証制度などが参入障壁になることも。

  • 通関や物流のスムーズさ、現地パートナーの信頼性など、運用面での実現可能性を冷静に評価。


⑤ 競争状況と差別化可能性

  • 既に大手がひしめく市場では、価格競争に巻き込まれるリスクも。

  • 自社の強み(技術・ブランド・ストーリー)が現地で差別化できるかを事前に検証。


2. 「好き」と「売れる」は違う

「この国が好きだから」「現地の人が日本文化に興味を持ってくれているから」——もちろん大切な視点ですが、それだけで市場選定を行うと感情先行の誤判断になりかねません。


例えば、ある食品メーカーは「ヨーロッパの方が日本の抹茶に興味を示してくれるから」と進出しましたが、結局は価格帯・習慣・競合とのバッティングで撤退を余儀なくされました。

感情はモチベーションになりますが、意思決定はデータと実現性に基づくべきです。


3. 実際の中小企業のマーケット選定理由(事例)

● 愛媛県の化粧品メーカーA社(進出先:ベトナム)

  • 日本の自然派商品への高い関心と親日感情。

  • 女性の美容意識の高まりと、中間層の増加を見込み、現地パートナーと協業。

  • 物流はシンプルで、越境ECとの併用が可能。


● 静岡の伝統工芸メーカーB社(進出先:フランス)

  • 日本文化に対する一定の理解がある市場。

  • 高価格帯のクラフト市場で競合が少なく、百貨店・ギャラリーを通じた販路開拓。

  • 「量より質」の戦略でブランディングに成功。


4. 優先順位のつけ方:3ステップで整理を

ステップ1:スクリーニング(20→5ヵ国)

各国を5つの視点で数値・情報化し、スコアで比較。

ステップ2:リスクとリターンの天秤

上位5カ国の中で、規制リスク・運用負荷を冷静に評価。

ステップ3:自社リソースとの適合性

人的リソース、現地対応の柔軟性などを加味し、進出可能性が高い国を最終決定。


5. 最後に:長く愛される「理由」をつくる

グローバル展開とは「輸出」ではなく、「価値の輸出」です。日本国内で積み重ねた品質・ストーリー・姿勢を、どの市場なら“きちんと届くか”を見極めることが鍵になります。

選定の段階で「売る」ではなく「残す」発想を持つことで、海外展開はもっと確実に、そして意味のあるものになるでしょう。

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