担当者とは仲良くなったのに、決裁者に会えない新規営業あるある

担当者とは仲良くなったのに、決裁者に会えない新規営業あるある
商談が前に進まない“担当者止まり”から抜け出す方法
新規営業を進めていると、こんな状況に陥ることがあります。
最初はなかなかアポイントが取れなかったものの、何度か訪問するうちに担当者とはすっかり顔なじみになった。
メールを送れば返信もある。商談では会社の状況や困っていることも話してくれる。「関係性はできている」と感じているのに、なぜか具体的な案件や受注にはつながらない。
そして、いざ具体的な提案をすると、「一度、社内で確認しておきます」「上司にも相談してみます」と言われ、その後なかなか話が進まない。
営業担当者としては、「担当者とは良い関係ができているのに、なぜ決裁者に会えないのだろう」と悩みます。これは新規営業において非常によくある“担当者止まり”という課題です。
担当者との関係が悪いわけではありません。むしろ、良好な関係を築けているからこそ、「もう少し話を進めれば何とかなるのではないか」と期待し、同じ担当者との商談を何度も繰り返してしまうこともあります。
しかし、営業活動において重要なのは、担当者と仲良くなることだけではありません。実際に誰が意思決定をするのかを理解し、その意思決定に必要な人と適切なタイミングで接点をつくることが必要です。
今回は、「担当者とは仲良くなったのに、決裁者に会えない」という新規営業あるあるをテーマに、商談が担当者止まりになってしまう原因と、そこから抜け出すための具体的な考え方について解説します。
担当者との良好な関係と、商談が進むことは別である
営業活動をしていると、「担当者との関係性ができれば受注に近づく」と考えがちです。もちろん、担当者との信頼関係は非常に重要です。
特に新規取引では、担当者が「この会社なら一度話を聞いてみてもいい」「社内に紹介しても問題ない」と思ってくれなければ、次のステップに進むことは難しくなります。
しかし、担当者との関係が良いことと、その担当者が社内で営業担当者の提案を推進してくれることは別の話です。担当者には決裁権がない場合もあります。
予算を決めるのは上司や経営者かもしれません。品質や技術面は別の部署が判断し、購買部門が取引条件を決めることもあります。つまり、BtoB営業では一人の担当者だけで取引が決まるケースはむしろ少ないのです。
それにもかかわらず、営業担当者が「この人と関係ができているから大丈夫」と考え、意思決定の仕組みを確認しないまま商談を進めてしまうと、提案が社内で止まってしまいます。
まず必要なのは、担当者との関係づくりと同時に、その会社ではどのように意思決定が行われるのかを理解することです。
なぜ営業担当者は「決裁者に会わせてください」と言いにくいのか
担当者との関係ができていても、決裁者への面談をお願いすることに抵抗を感じる営業担当者は多くいます。
「せっかく良い関係ができているのに、無理なお願いをして嫌われたくない」「まだ提案内容が十分ではないから、もう少し担当者と話してからにしよう」「決裁者に会わせてもらえないということは、まだ信頼されていないのかもしれない」。
このように考え、決裁者へのアプローチを先延ばしにしてしまいます。
しかし、営業担当者が決裁者に会いたい理由は、自社の商品を直接売り込むためだけではありません。
決裁者がどのような課題を重視しているのか、どのような方向に事業を進めようとしているのかを理解しなければ、本当に価値のある提案をつくることは難しいからです。
担当者が話している課題と、決裁者が考えている課題が同じとは限りません。
現場の担当者は「作業を効率化したい」と考えている一方、経営者は「今後の市場拡大に対応できる生産体制をつくりたい」と考えているかもしれません。同じ提案でも、誰にどのような価値として伝えるかによって、受け止め方は変わります。
だからこそ、決裁者に会うことは「営業の都合」ではなく、お客様にとってより適切な提案をするために必要なプロセスとして考えることが重要です。
最初の商談から「誰が意思決定するのか」を確認する
担当者止まりを防ぐためには、商談が進んでから慌てて決裁者を探すのではなく、初期段階から意思決定の流れを確認しておくことが効果的です。
ただし、初対面から「社長に会わせてください」「決裁者は誰ですか」と直接的に聞く必要はありません。お客様の立場からすると、営業会社がいきなり上の人に会おうとしているように感じることもあるためです。
自然な会話の中で、「今回のような案件の場合、通常はどのような流れでご検討されることが多いですか」「実際に進めることになった場合、どの部署の方々が関わることになりますか」と確認することができます。
こうした質問によって、誰が関係者なのか、どのようなプロセスで意思決定が行われるのかを把握できます。
また、担当者が重要な情報をすべて持っているとは限りません。
早い段階で意思決定プロセスを理解しておくことで、「次は技術部門の方にもお話を伺ったほうが良さそうだ」「この段階では購買担当者との調整が必要になる」と、営業活動を適切に設計できるようになります。
営業では、相手の役職だけを見て「決裁者かどうか」を判断するのではなく、誰が提案に影響を与え、誰が最終的に判断するのかを理解することが重要です。
担当者を「突破口」と考えるのではなく、「味方」にする
決裁者に会えないとき、「担当者を飛び越えて直接アプローチしたほうがいいのではないか」と考える営業担当者もいます。しかし、新規営業では注意が必要です。
担当者との信頼関係を無視して上位者へ直接アプローチすると、「自分を通さずに話を進められた」と感じさせてしまい、せっかく築いた関係を損なう可能性があります。
大切なのは、担当者を乗り越えるべき壁ではなく、一緒に社内で提案を進める味方にすることです。
例えば、「今回のお話をより具体的に検討するために、実際に判断される方のお考えも伺えれば、より御社に合った提案ができると思っています」と伝えることで、決裁者への面談が営業担当者の一方的な要求ではなくなります。
また、「社内でご説明いただく際に、どのような点が重要になりそうでしょうか」と聞くことも有効です。担当者が社内で提案を進めるために必要な情報を知ることで、営業担当者は担当者の支援ができます。
つまり、担当者に「社内で営業してもらう」のではなく、担当者が社内で説明しやすい環境を一緒につくるという考え方です。この姿勢を持つことで、担当者との関係もより強くなります。
「紹介してください」と言う前に、紹介する理由をつくる
決裁者に会いたいと考えても、お客様側から見て「なぜ会う必要があるのか」がわからなければ、紹介してもらうことは難しくなります。
そこで重要なのが、決裁者に会うための理由をつくることです。
例えば、単に「ご挨拶したいので社長をご紹介ください」とお願いするよりも、「今後の事業展開について一度お考えを伺えれば、長期的にどのような形でお役に立てるか検討したい」と伝えたほうが、面談の目的が明確になります。
また、具体的な案件がある場合には、「今回の提案は現場の改善だけでなく、今後の生産体制にも関わる可能性があるため、経営的な観点も含めて一度方向性を確認させていただきたい」といった理由を伝えることができます。決裁者の時間は限られています。
だからこそ、「営業担当者が会いたいから」ではなく、「会うことでどのような価値があるのか」を明確にする必要があります。
この考え方は、決裁者への面談だけでなく、営業活動全体に共通します。相手に時間をいただくのであれば、その時間がお客様にとって意味のあるものになるよう準備することが、営業としての基本です。
担当者との会話だけで提案内容を決めない
担当者止まりの商談では、営業担当者が担当者から聞いた情報だけをもとに提案を作成しているケースがあります。
もちろん、担当者から得られる情報は非常に重要です。しかし、一人の担当者が見ている範囲だけで、お客様の会社全体の課題を判断することには限界があります。
例えば、現場担当者から「コストを下げたい」という相談を受けた場合、そのまま価格を下げる提案をすることが最適とは限りません。決裁者が重視しているのは、品質の安定や将来的な供給体制かもしれません。
営業担当者が提案を作る際には、「この提案を最終的に判断する人は、何を重視するだろうか」という視点を持つことが重要です。
担当者に、「上司の方や経営層の方は、このようなテーマについてどのようなことを重視されていますか」と聞くこともできます。
決裁者に直接会えない段階であっても、意思決定者の視点を意識することで、提案の内容や伝え方は変わります。
そして、担当者自身が「この提案なら社内でも話しやすい」と思える内容になれば、決裁者への接点をつくる可能性も高まります。
商談が長く停滞している場合は、営業プロセスを見直す
何度も担当者と会っているのに、案件が具体化しない。見積や資料を提出しているのに、検討状況が前に進まない。このような状態が続いている場合は、単純に訪問回数を増やすのではなく、一度営業プロセスを見直す必要があります。
確認すべきなのは、「誰が意思決定者なのか」「決裁に必要な条件は何か」「現在どの段階で止まっているのか」「次に誰と何を確認すれば前に進むのか」ということです。
営業案件は、担当者との関係が良好だから進むわけではありません。
必要な人が、必要な情報を持ち、適切なタイミングで判断できる状態をつくることで前に進みます。
営業担当者が「関係性はできているのに受注できない」と感じたときは、関係性をさらに深めることだけを考えるのではなく、商談の構造そのものを見直してみることが必要です。
時には、担当者との会話の中で率直に「今回の件を進めるうえで、他に確認させていただいたほうがよい方はいらっしゃいますか」と聞くことも重要です。
営業は、相手の気持ちを推測し続けることではありません。適切な質問を通じて、商談を前に進めることも営業担当者の役割です。
まとめ|担当者との信頼を「社内の前進力」に変える
「担当者とは仲良くなったのに、決裁者に会えない」という状況は、新規営業では決して珍しいことではありません。
しかし、担当者との良好な関係だけでは、商談が前に進まないこともあります。重要なのは、誰が意思決定に関わるのかを理解し、そのプロセスに合わせて営業活動を進めることです。
初期段階から意思決定の流れを確認する。担当者を飛び越えるのではなく、社内で提案を進める味方にする。決裁者に会うこと自体を目的にするのではなく、より良い提案をつくるために会う理由を明確にする。
こうした視点を持つことで、“担当者止まり”の営業から抜け出すことができます。
営業における本当の信頼関係とは、単に仲良くなることではありません。お客様の社内で仕事を前に進めるために、お互いに協力できる関係をつくることです。
担当者との関係を大切にしながら、その先にいる意思決定者や関係者にも目を向ける。営業担当者一人だけで商談を進めようとせず、お客様の社内にいる関係者と一緒に「この提案を進める意味」をつくっていく。
そのような営業ができるようになると、担当者との関係性は単なる人脈ではなく、新しい取引を生み出す大きな力へと変わっていきます。
新規営業で商談がなかなか前に進まないと感じたときは、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
「担当者と、どれだけ仲良くなれたか」ではなく、「この案件を前に進めるために、本当に話をするべき人と会えているか」。
その視点を持つことが、担当者止まりの営業から抜け出し、受注へ向けて商談を動かす第一歩になるはずです。





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